日本でも珍しい”海の温泉”が湧き出る和倉には、一羽のシラサギによって湯脈が発見されたという言い伝えが残っています。
和倉温泉の歴史は、およそ1200年にはじまります。大同年間(806年~810年)の温泉湧出の後、地殻変動により沖合60メートルの海中に湧き口が移動したと伝えられます。
それから時代を経た永承年間(1046年~1053年)、和倉に暮らしていた漁師夫婦によって湯脈が発見されました。
七尾湾の沖合で、傷ついた足を癒すシラサギを見つけた夫婦が、不思議に思って近づいてみると……、そのあたりから温泉が湧き出ていることが分かったのです。
和倉温泉の桟橋跡
滞在中は「海の上に宿泊している」と錯覚してしまうくらい、海の気配が間近に迫った温泉地です。
日が沈むと、真っ黒な海沿いに建物の明かりが浮かび上がって幻想的な世界を作り出します。
時間帯によって表情を変える海の景色は、ただ眺めているだけでも最高に贅沢な時間と感じます。
露天風呂やテラスから海釣りを楽しめる宿もありますし、七尾湾に突き出すプライベートの桟橋が設けられている宿も少なくありません。
事前予約があれば、特別に船でチェックインできる宿も存在します。
宿の敷地内にある桟橋は、ポツンと立つ街灯が雰囲気を盛り上げてくれて、まるで映画の主人公にでもなったかのような気分に包まれる最高のビュースポットです。
和倉は海の中でわき出す温泉だったのです。
その結果、浦が涌く(湧く)、涌く(湧く)浦、和倉と呼ばれるようになりました。
この泉源に湯島が作られると、橋が架け渡され、自然の堆積が進む中で人の手によって埋めたても行われます。
この頃の名残として残っているのが、有名な和倉温泉の
湯島とは海中から湧出する温泉をくみ易くするための人工島ですね。
最終的に明治41年、完全に陸地化され、弁天島と呼ばれた湯島が島ではなく岬になって、弁天崎と呼ばれるようになったと『和倉温泉のれきし』にも書かれています。
実際に現地の地図、あるいはドローンでの空撮映像を見ると分かる通り、和倉温泉の海岸線は全て直線で構成されています。埋め立てられた痕跡が見て取れるのですね。
和倉温泉はかつて海中にあり、その源泉に陸地が近づいていった歴史があります。この海に陸地がせり出していった立地も、和倉温泉のオーシャンビューを格別に美しくしている理由の1つと言えるのですね。
和倉温泉の総湯にもぜひお立ち寄りください
2011年4月にリニューアルオープンした和倉温泉総湯は、源泉100%の和倉の湯と温泉町の雰囲気を手軽にお楽しみいただくための共同浴場です。
大浴槽・小浴槽・立ち浴槽・露天風呂・サウナ・水風呂・足湯(屋外)を備えております。
大浴場や露天風呂、畳敷きの休憩所など充実した設備をそろえる公共浴場で、地元客はもちろん、観光客も数多く訪れます。
お湯は神経痛や貧血に効果があるとされ、飲泉も可能です。